平成19年度
PC技術協会賞選考経過報告


 PC技術協会賞は,元本協会会長,京都大学名誉教授の坂静雄博士の基金に
よって創設されたものである。平成19年度は,第35回目の表彰である。今回の
受賞は,論文部門2件,作品部門8件,技術開発部門2件および施工技術部門2件
の計14件である。今回授賞したものは,いずれもきわめて優れたものであり,プレ
ストレストコンクリート(PC)技術の進歩と発展に著しい貢献をされ,PC技術を用い
た構造物の将来の方向を示すとともに,社会基盤施設の形成に大きく寄与する
ものである。
 論文部門は,本協会機関誌,プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジ
ウム論文集,本協会の各種刊行物に発表された研究論文,工事記録等に対して,
応募および選考委員より推薦された中から選定した。また,作品部門,技術開発
部門および施工技術部門は,いずれも応募された中から選定した。
 以下に,各授賞の選定理由を述べる。

 T 論文部門 
  ・ PC梁部材の残留変形率算定式
   
  (協会誌第49巻5号)
隅 田   寛 殿
岸 本 一 蔵 殿
李   徳 基 殿
大 野 義 照 殿
 PC梁部材を対象に,地震時における残留変形量を求める算定式を提案した。PC部材の残留変形量は,普通鉄筋の量,PC鋼材の配置位置や量等,多くの要因の影響を受けるため,その算定は複雑で困難であるが,著者らは,従来からコンクリート系部材の変形量を求める手法として一般的な断面解析に,等価塑性ヒンジ理論を適用する方法を基にして基本式を誘導し,基本式中の各係数を復元性に影響を及ぼす因子をパラメータとした分割要素解析により求めた。さらに,実験値によるキャリブレーションを加えて,残留変形率の算定式を提案した。
 この提案式はPC建築構造物の性能設計方法の発展に大きく寄与するものであり,本論文をPC技術協会賞論文部門に選定した。

  ・ PC橋の断面修復に関する実験的研究
  
(協会誌第49巻1号)
本 間 淳 史 殿
横 山 和 昭 殿
玉 置 一 清 殿
   三 加    崇 殿
 補修において,ひび割れ部への注入が劣化損傷部への投薬治療にたとえられるのに対し,断面修復は外科手術に相当し,効果は高いが不適切であった場合には逆に,構造物の寿命を縮めることもある。PC橋を断面修復する場合には,断面修復部のひび割れの発生に着目した設計を行うことが重要である。
 本論文では,ポリマーセメントモルタルを吹き付けた実大寸法のPC桁模型実験や材料基礎実験によって,断面修復部に蓄積される内部拘束応力の定量的評価を試み,断面修復部のひび割れの発生を推定する実用的な手法を提案するとともに,外ケーブル等により断面修復材にプレストレスを導入した場合の有効率を明ら
かにした。
 PC橋の更なる延命化を図る有用な知見と実用性の高さから,本論文をPC技術協会賞論文部門に選定した。


 U 作品部門 
 作品部門は,PC技術の進歩と発展に大きく貢献するとともに,美観・景観,構造,材料・施工,社会への貢献および環境への配慮などの諸観点より選定した,

  ・ 徳之山八徳橋
(独)水資源機構 徳山ダム建設所 殿
 本橋は,総貯水容量が日本最大の6億6千万m3の徳山ダム湖を横断する橋長が503mの長大エクストラドーズドPC橋である。3径間連続の中央径間は,この種の型式では世界最長の220mを有する道路橋であり,100mクラスの高橋脚はその大半が徳山ダム湖中に埋没しても,ダム湖両岸を横断する橋長が503mの長大橋は周辺の豊かな自然にマッチしている。
 架橋地点周辺の自然環境に与える影響を可能なかぎり回避し低減するために,超大型の移動作業車を用いた張出し架設工法を採用して,ブロック数を半減するとともに,大幅な工期の短縮を図っている。
 エクストラドーズドPC橋の適用範囲を拡大するとともに,今後の長大PC橋の建設技術の発展に寄与しており,PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 天間川橋梁
東日本旅客鉄道 殿
 天間川橋梁は,東日本旅客鉄道東北線の上北町・乙供間に位置し,の河川改修事業に伴い,改築したものである。橋梁の構造型式は,下路型式の3径間連続鉄筋コンクリート(RC)アーチ橋であり,アーチ部材を橋台と橋脚に剛結して主桁を連続桁型式とした構造は,世界で最初である。また連続主桁をアーチリブから吊材で支持する新しい構造型式も開発して,橋長が180mの鉄道橋梁に採用している。
 この構造型式を採用することで,従来の単純PCアーチ橋の場合と比較して,下部工の断面を縮小でき,桁高およびPC鋼材量等を低減することが可能となった。
 景観と経済性に優れた新しい構造型式の開発を行い本橋梁に適用したことは,今後のPC橋梁の建設技術の発展に寄与しており,PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 三兼池橋 
大野城市上大利北土地区画整理組合 殿
大成建設 殿
 三兼池橋は,超高強度繊維補強コンクリート(UFC)をわが国で最初に2径間連続桁橋に適用した歩道橋である。部材厚は7〜20cmと非常に薄く,70%以上の大幅な軽量化を実現している。この橋はまた,主桁と床版を分離して製作し,孔開き鋼板ジベルを用いて接合している。
 桁高スパン比は1/40と従来の1/2程度に抑えられ,自然景観を圧迫しないシンプルな構造型式となっている。また,橋面排水や夜間照明にも配慮するなど,周囲の公園と調和するように景観設計が施されている。
 超高強度繊維補強コンクリート(UFC)の特性を有効に活用して,連続歩道橋へと新しい構造型式に実現させたことは,今後のPC橋の建設技術の発展に寄与しており,PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 中央環状線山手トンネル換気塔
首都高速道路 殿
 中央環状線の山手トンネル換気塔は,一辺が3mの六角形断面で,高さが45mのPC構造である。山手通りの中央分離帯に大規模な換気塔を連続して設置しなければならない厳しい設計条件をクリアーするために,スリムに見えるプレキャストPCの高さが45mの換気塔を採用し,給気部を分離して配置するデザインは,地域性を配慮して素材と仕上げにも工夫を凝らすことにより,優れた景観を創造している。
 外壁面に斜めリブを設け,六角形の出隅部に面違いを設けたことで,太陽高度の変化による受光面の影の変化を創設している。またPC構造の採用により,構造物のコンパクト化,視覚的圧迫感の低減,現場工期の短縮を可能にしている。
 新しい都市景観の創出と社会的貢献度の高い事業の推進に大いに役立っており,PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 武庫川女子大学 建築スタジオ
学校法人武庫川学院 殿
 本建物は,女子大学として初めての建築学科の設立に伴い,設計演習を行う設計スタジオ,講評室,教員室からなる学科の新校舎である。校舎が学生にとって「生きた教材」となるように,構造躯体には空間をより表現できるPC建築を採用している。
 見つけが160mmのPCaPC細柱とPCaPC床版で構成した設計スタジオ,細柱のシャープなディテールを展開した外観および圧着工法で製作したPCaPC階段やPCaPCルーバからなるエントランスが特徴である。また,スタジオや講評室は,機能性と快適性にも富んでいる。
 PCaPC柱とPC床版とで構成されるスパンが16mの広い空間を創造し,また生きた教材としてのPC構造を積極的に採用して,洗練した空間とシャープな外見の校舎を実現しており,PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 北陸新幹線 姫川橋りょう
(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構
鉄道建設本部北陸新幹線第二建設局 殿
 北陸新幹線の姫川橋りょうは,新幹線では初めての採用となるPCフィンバック橋である。全長が462mの7径間の連続PCフィンバック型式は,隣接する高架橋との連続性をはかり,背景の山並みに溶け込むなど,周囲の景観に調和した北陸新幹線長野一金沢間のシンボルと.なっている。
 PCフィンバック型式を新幹線という大断面で施工するため,実物大の模型試験で各種の施工性を確認するとともに,海岸線に近いことから,橋梁の全周に防水塗装を行う塩害対策を実施している。
 新しい構造型式を新幹線の橋梁に実現させて,今後のPC橋梁の建設技術の発展に寄与しており,PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 山切1号高架橋
中日本高速道路梶@横浜支社 殿
 1号高架橋は,新東名高速道路と東名高速道路とを結ぶ清水連絡路間に位置している。橋長が約700m,有効幅員は上下線ともに10.75m,最大支間長が50mのPC15径間連続箱桁橋である。
 本橋は,起伏が激しい地形で民家やみかん畑が近接しているため,地形の改変を最小にする目的で施工された。製作ヤードでセグメントを製作・ストックし,これを運搬して架設し,架設桁を使用したプレキャストセグメントによる張出し架設工法を採用している。
 厳しい施工条件を,橋台背面の土工部を利用したプレキャストセグメント工法を採用して,橋長が約700mのPC15径間連続箱桁橋を張出し架設工法により施工した本橋は,今後のPC橋の建設技術の発展に寄与しており,PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 杉谷川橋(下り線)
西日本高速道路 関西支社 殿
 杉谷川橋(下り線)は,新名神高速道路として滋賀県甲賀市に建設されたPC6径間の連続ラーメン波形鋼板ウェブ箱桁橋である。波形鋼板の上・下鋼フランジを添接板とボルトにより連続化し,下床版の下面にはプレキャストPC埋設型枠を採用して,施工中の安全性と耐久性の向上を図っている。また新しい架設機械を導入して3ブロックを同時に施工し,工期を大幅に短縮した。さらに,新しいプレートジベルによる波形鋼板と下床版コンクリートの接合構造を採用して,維持管理性を向上させている。
 設計と施工において新しい革新的な構造と工法を種々に開発して適用し,今後のPC橋の建設技術の発展に寄与しており,PC技術協会賞作品部門に選定した。


 V 技術開発部門    
  ・ UFCを用いたプレキャスト部材の接合方法及び低桁高部材の製作技術の開発
大成建設 殿
 超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を用いて,低桁高の箱桁部材の製作方法および接合方法を開発した。本開発により,収縮が大きいUFCであっても,セグメントの寸法や接合面の精度を保ちながら,部材厚が6cm,桁高が55cmの低桁高箱桁部材の製作が可能となった。また,接合面のせん断伝達耐力を向上させるために,UFCのプレキャストせん断キーも実用化した。そしてこれらの技術は,豊田市の総合体育館横断歩道橋に適用されている。
 以上のように本技術は,PC技術の進歩,発展に大きく貢献するものであると認められたことから,PC技術協会賞技術開発部門に選定した。

  ・ リバーサイド千秋連絡橋
ユニー 殿
鹿島建設 殿
 リバーサイド千秋連絡橋は,新潟県長岡市に建設されたショッピングセンターとシネマコンプレックスの建物間をつなぐ橋長が30.5m,有効幅員が3.5mの3径間連続PCラーメン歩道橋である。本橋には,立地条件による制約を解決するために二つの新しい技術を開発し,適用されている。一つは,主桁高さを大幅に低減するために,エトリンガイト生成系の超高強度繊維補強コンクリートである。二つ目は,地震力の低減を図り,コストの縮減と維持管理も容易にするために,橋脚に細い4本のRC柱を組み合わせて橋梁を長周期化させるとともに,RC柱間に鋼製トラスの制震ダンパーを組み入れた制震橋脚構造である。
 以上のように本橋は,PC技術の進歩,発展に大きく貢献するものであると認められたことから,PC技術協会賞技術開発部門に選定した。


 W 施工技術部門   
  ・ 曳田歩道橋
活タ部日鋼工業 殿
 曳田歩道橋は,鳥取県一般県道鷹狩渡一木線の曳田川に架かる曳田橋(道路橋)に併設された単独の歩道橋である。超高強度繊維補強コンクリート(UFC)を用いた支間が63.3mの国内最長の単純PC下路桁橋である。
 桁の製造および現場施工において,@高流動であることによる打込み時の木製型枠の変形制御,A緩衝材を用いて自己収縮に起因する型枠の拘束力の低減,BUFCの連続性を確保した打込み,Cセグメント間のウェットジョイントの給熱養生方法,DPCケーブルの緊張により発生する2次力の制御などの課題を解決している。
 以上のように本橋は,種々の施工における課題を解決し,PCの施工技術の進歩,発展に大きく貢献するものであると認められたことから,PC技術協会賞施工技術部門に選定した。

  ・ 新数久田橋補修工事
兜x士ピー・エス 殿
 新数久田橋は,沖縄県名護市の一般国道58号線に架かるポストテンション方式のPC単純T桁橋である。海岸線に位置するため,塩害による損傷が著しい状態であった。
 本工事では,電気防食に線状陽極材を設置するために適切な,溝幅が小さくてはつり作業が不要となる新工法を採用した。そして,主桁の断面欠損を最小限にし,コンクリートのガラの発生を抑制している。また陽極材を縦方向に設置することにより,部分的な過電流が流れるのを防止して効率的な防食を図っている。
 以上のように本橋は,電気防食における種々の施工上の課題を解決し,PC技術の進歩,発展に大きく貢献するものであると認められたことから,PC技術協会賞施工技術部門に選定した。