平成20年度
PC技術協会賞選考経過報告


 PC技術協会賞は、元本協会会長、京都大学名誉教授の坂 静雄博士の基金に
よって創設されたものである。平成20年度は、第36回目の表彰である。今回の受賞は、
論文部門2件、作品部門7件、技術開発部門1件、および施工技術部門3件の計13件で
ある。今回授賞したものは、いずれもきわめて優れたものであり、プレストレストコンク
リート(PC)技術の進歩と発展に著しい貢献をされ、PC技術を用いた構造物の将来の
方向を示すとともに、社会基盤施設の形成に大きく寄与するものである。
 論文部門は、本協会機関誌、プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム
論文集、本協会の各種刊行物に発表された研究論文、工事記録等について、応募お
よび選考委員より推薦された中から選定した。また、作品部門、技術開発部門、および
施工技術部門は、いずれも応募された中から選定した。
 以下に、各授賞の選定理由を述べる。

 T 論文部門 
  ・ PC橋の改造技術に関する研究(総合題目)
   
(協会誌第49巻5号〜第50巻5号、7回に分けて連載) 
            (独)土木研究所 殿
(社)プレストレスト・コンクリート建設業協会 殿
            東北大学大学院 殿
 本論文は、塩害により劣化したPC橋の断面修復に関する実験的、解析的な
検討の成果を報告したもので、当協会の会誌に7編に分けて連載された。RC部
材とは異なりプレストレス力が作用するPC部材の断面修復では、はつり時の安
全性やプレストレス力の再配分等の影響を明確することが特に重要である。そのため著者らは、実物大PC桁を用いた大規模なはつり・断面修復による実験的、解析的な検討をはじめ、PC鋼材の機械的性質、PC部材の構造安全性、断面修
復部の耐久性等に着目した様々な検討を行っている。
 それらの多岐にわたる研究成果を包括的に取りまとめて作成した補修の手引き(案)は、実務的に有用であり、今後のPC橋の維持管理に大きく貢献できるものと評価され、本論文をPC技術協会賞論文部門に選定した。

  ・ PC合成桁のせん断伝達機構に関する検討
(協会誌第50巻3号)
                                村 越  潤 殿
                                田 中 良 樹 殿
                                横 田  勉 殿
                                大 山 博 明 殿
 本論文は、土木研究所とプレストレスト・コンクリート建設業協会が実施しまし
た、「橋梁用プレキャストPC部材の接合技術に関する共同研究」の成果をまとめ
たものである。この共同研究では、コンクリート間の接合部におけるせん断伝達
機構をより明確にするため、せん断伝達に及ぼす接合面の表面粗度の影響、お
よびずれ止め鉄筋のダウエル効果について、新たに実験的検討を行うとともに、
既往の試験データの再分析を行い、それらの成果を報告している。
 そして、PC合成桁の主桁と床版間の接合面のせん断伝達について、はり試験
による検討を行い、得られた知見を踏まえて、PC合成桁接合面のせん断伝達耐
力の算定法を提案している。この提案式はPC合成桁の性能設計方法の発展に
大きく寄与するものであり、本論文をPC技術協会賞論文部門に選定した。


 U 作品部門 
 作品部門は、PC技術の進歩と発展に大きく寄与するとともに、美観・景観,構
造・材料・施工、社会への貢献、環境への配慮などの諸観点より選定した。

  ・ 東京国際空港国際線地区GSE橋梁
国土交通省 関東地方整備局東京空港整備事務所 殿
羽田空港国際線エプロンPFI(株) 殿
  大成・鹿島・五洋・東亜・鹿島道路・大成ロテック異工種建設工事共同企業体 殿
 GSE橋梁は、主桁部に超高強度繊維補強コンクリートのUFCを用いた羽田空港
内の道路橋である。UFCの高性能を活用することにより、ジェット機を牽引する総
重量50tfの重車両でありながら、スパンを46.0mとし、かつ通常のPC橋に比べて
桁高を約80%に、橋自重を約60%に抑えている。
 本橋には、これまで培ってきたUFC技術が結集されるとともに、新たに開発され
た接続部構造も採用し、高耐久で世界最大のUFC道路橋を実現しており、PC技
術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 三内丸山架道橋
鉄道・運輸機構鉄道建設本部東北新幹線建設局 殿
 三内丸山架道橋は、青森県青森市に東北新幹線の橋梁として架設されまし
た、橋長が450m、最大支間長が150mの4径間連続PCエクストラドーズド橋であ
る。支間長が150mは、我が国の鉄道コンクリート橋で最長である。
 本橋では、一日の温度変化や季節の温度変化によるたわみを小さくするため
に、すべりゴム支承を採用し、またグラウトにより斜材の断熱性を高め、新幹線の
橋梁に要求される厳しいたわみ制限を満足させている。
 本橋梁は、エクストラドーズドPC鉄道橋梁の適用範囲を拡大するとともに、今後
の長大PC橋の建設技術の発展に寄与しており、PC技術協会賞作品部門に選定
した。

  ・ 矢部川大橋 
国土交通省 九州地方整備局 殿
 矢部川大橋は、1級河川の矢部川に架かるPC3径間連続斜張橋である。中央
支間長の261mは、PC斜張橋として我が国で最長である。長大斜張橋では稀な
曲線橋であることから、傾斜した主塔を採用し、主塔部に働く主桁の水平力を低
減させるとともに、その水平力に対して大規模地震時のみ可動となるトリガータイ
プのストッパー構造を開発して採用している。
 また主桁の施工においては、河川への環境汚染に配慮し、施工ブロック長が8
mの超大型移動作業車を用いて河川上での施工期間を短縮している。
 我が国で最長の曲線PC斜張橋を実現するために種々の構造を開発して本橋
梁に適用したことは、今後のPC橋梁の建設技術の発展に寄与しており、PC技術
協会賞作品部門に選定した。

  ・ いちとにぶんのいちview
株式会社いちとにぶんのいち 一 宮 博 史 殿
 本建物は、高知県安芸郡に建つ地上2階建ての商業施設で、海岸から20数m
の高さの崖地から、トラス状に組んだ鳥籠のようなPRC構造型式の建物である。
片持ちの9mの長さに対する引張り部材にはプレストレスを導入し、1階とR階の
梁に導入するプレストレス量を変え、自重による変位をコントロールしている。
 太平洋に向かって9m突き出た躯体は、敷地内で打ち込んで養生した後に、簡
便な電動ウィンチを使用して移動させている。
 プレストレスの技術を独創的に用いた本建物は、PC技術の発展に寄与してお
り、PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ いちい信用金庫 新本店
いちい信用金庫 殿
 本建物は、愛知県一宮市に建設された信用金庫の新本店である。外部に設け
たPC造のペア柱とPC平板とでST床版を挟むように組み立てた格子状のPC架構
は、「免震構造」と「大組架構」の複合によって地震力による大きな応力から解放
させることで、見付け幅の小さい部材で構成できるという工夫がなされている。こ
の工夫により、軽快さと重厚さを兼ね備えた外観と開放的な事務空間を実現して
いる。
 プレストレスの技術を合理的に用いた本建物は、PC技術の発展に寄与してお
り、PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 星が浦海岸通架道橋〜複合PCランガー橋〜
北海道旅客鉄道株式会社  殿
 星が浦海岸通架道橋は、北海道の道東地域に建設された複合PCランガー橋
である。本橋梁は、スパンが65mで、鉄道のPCランガー橋では我が国最大級の
規模となっている。
 本橋の一番の特徴は、アーチ材にRC構造、鉛直材に鋼構造、補剛桁にPC構
造を、それぞれ採用した複合構造である。特にアーチ材のRC構造と鉛直材の鋼
構造による接合方法は、我が国で初めての構造形式が採用されている。
 本橋梁はまた、ライズ比を経済的な範囲で高く設定しており、スレンダーなアーチリブは遠方からも良く見え、存在感があり、PC技術協会賞作品部門に選定し
た。

  ・ 億首川橋の中空床版橋リニューアル
西日本高速道路株式会社  殿
 億首川橋の中空床版橋リニューアルは、沖縄自動車道の劣化したRC中空床版
橋をプレテンションPC中空床版橋に架替えた作品である。本工事では、既存の2
柱式の橋脚に対して、支承上の横梁を介してプレテンション桁を連結する構造を
始めて採用し、架替え時の規制期間の短縮とコストの縮減を図っている。また本
工事では、使用する全てのコンクリートに高炉スラグ微粉末を混合し、耐久性を
向上させるとともに、CO2排出量も低減させている。
 そして、平行に並んだプレキャスト桁は、視覚的にも優れ、周辺環境とよく調和
しており、本橋をPC技術協会賞作品部門に選定した。


 V 技術開発部門    
  ・ プレストレストコンクリート橋桁施工のためのPC支保工の開発
前田建設工業株式会社 殿
 本技術開発は、地上70mに位置する長大斜張橋のプレストレストコンクリート
桁を施工するために開発された支保工システムである。支柱はプレキャストコン
クリートブロックを積み上げてPC鋼棒で緊張したプレストレスト構造で、施工精度
、耐力、経済性に優れ、また転用も可能な構造である。本支保工は、香港におい
て150万空立方メートルの規模で実施し、製作、施工および解体まで無事完了し
ている。
 以上のように本技術は、PC技術の進歩、発展に大きく貢献するものであると認
められたことから、PC技術協会賞技術開発部門に選定した。


 W 施工技術部門   
  ・ 平成20年度山形県立新庄南高等学校 特別教室棟耐震補強工事
株式会社 富士ピー・エス 殿
 本工法では、プレキャストの柱と梁でフレームを形成し、PC鋼棒により既存建物
に圧着させている。またその内面には、筋かい状にPC鋼棒を配置・緊張し、耐震
性能を向上させている。今回の耐震補強工事は、教室を使用しながら、建物の両
側に合わせて23構面のフレームを設置し補強を行っている。
 柱と梁をプレキャスト化することで、高品質の部材を提供でき、かつ現場施工の
省力化および期間短縮を図っている。また、フレーム内にPC鋼棒を配置すること
により、部材断面を小さくすることができ、意匠性および経済性の向上を図っている。
 以上のように本工事は、耐震補強における新しい工法を採用し、PC技術の進
歩、発展に大きく貢献するものであると認められたことから、PC技術協会賞施工
技術部門に選定した。

  ・ 芳雄橋上部工工事
株式会社 富士ピー・エス 殿
 芳雄橋は、福岡県飯塚市の遠賀川に架けられた橋長が217.5m、有効幅員が
18.0mのPC6径間連続変断面中空床版橋である。本橋は地域住民の意見を反
映し、石を基調とした重厚感のあるクラシカルなデザインを採用している。
 施工では産官学が一体となり、技術的な課題を抽出し、各種のひび割れ対策
や桁化粧部の試験施工等を行って、所要の品質を確保したデザイン通りの美観
に優れた橋梁を造っている。
 以上のように本橋は、景観にも配慮し、施工における種々の課題を解決し、
PCの施工技術の進歩、発展に大きく貢献するものであると認められたことから、
PC技術協会賞施工技術部門に選定した。

  ・ 新東名高速道路 赤淵川橋
中日本高速道路株式会社 東京支社 殿
 本橋は、静岡県富士市に位置するPC(6+5)径間の連続波形鋼板ウェブ箱桁橋
である。本橋は、急峻な渓谷に建設されるため、支間割りがアンバランスであり、
支間長が長く、側径間が非常に長い橋梁である。波形鋼板を利用した架設工法
により、張出し架設速度を向上させている。
 また、移動作業車の組立・解体の省略,側径間支保工の省力化など、不等径
間を有する橋梁の合理的な施工を実現している。
 以上のように本橋は、種々の施工における課題を解決し、PCの施工技術の進
歩、発展に大きく貢献するものであると認められたことから、PC技術協会賞施工
技術部門に選定した。