平成21年度
PC技術協会賞選考経過報告


 PC技術協会賞は,元本協会会長,京都大学名誉教授の坂 静雄博士の基金によって
創設されたものである。平成 21年度は,第 37回目の表彰である。今回の受賞は,論文
部門 2件,作品部門 7件,技術開発部門 1件,施工技術部門 2件の計 12件である。
今回授賞したものは,いずれもきわめて優れたものであり,プレストレストコンクリート
( PC)技術の進歩と発展に著しい貢献をされ,PC技術を用いた構造物の将来の方向を
示すとともに,社会基盤施設の形成に大きく寄与するものである。
 論文部門は,本協会機関誌,プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジウム
論文集,本協会各種刊行物に発表された研究論文,工事記録等について,応募および
選考委員より推薦されたなかから選定した。また,作品部門,技術開発部門および施工
技術部門は,いずれも応募されたなかから選定した。
 以下に各授賞の選定理由を述べる。

 T 論文部門 
  ・高炉スラグ微粉末を併用した高品質な PCグラウトの製造
   (総合題目)   
(高炉スラグ微粉末の併用による高品質なPCグラウトの製造)
(第 18回シンポジウム論文集)
(高炉スラブ微粉末を併用したPCグラウトの収縮およびブリーディング)
(第 17回シンポジウム論文集)
李    春 鶴 殿
山 口 光 俊 殿
池 田 正 志 殿
藤 本 晃 輔 殿
辻    幸 和 殿
 本論文は,製造から供用期間にわたって高い性能と品質を有する PCグラウト
の開発に関する実験成果を報告したものである。近年は,セメントの塩化物イオ
ン量の規制緩和と高炉スラグ微粉末などの産業廃棄物の積極的な利用の時代
となり,構造物の多様な要求性能から, PC構造物の高強度化が急速に進んで
いる。このような時代の要請と技術の進歩にあわせて,高炉スラグ微粉末,PC
グラウト用混和剤,高性能 AE減水剤の適切な組合せを選定し,腐食性のある構
成成分を極力抑えたうえで,所要の流動性,材料分離抵抗性,収縮性状を保ち
ながら,高い圧縮強度を有する PCグラウトの開発を行っている。
 このような高品質のPCグラウトはこれからのニーズに応えるもので, PC構造
物の建設等に多大な貢献を行うことができる。以上のことから本論文を PC技術
協会賞論文部門に選定した。

  ・ 段差付き空胴プレストレストコンクリート合成床の開発実験
(協会誌第 51巻 4号)
竹 田 清 二 殿
鶴 田 賢 二 殿
徳 留    卓 殿
 最近の急速な高齢化の進展とともにバリアフリータイプの住宅が増えている。
このため集合住宅では水回りを段差スラブにすることが多いが,段差部の施工
は複雑でコストも高くなりやすい。この問題を解決するため,空胴プレストレスト
コンクリート板による工場組立て方式の段差合成床の開発を行っている。すなわ
ち, 1スパン分の空胴プレストレストコンクリート板を 2枚に分割し,工場で段差
状に配置し,段差部の空胴をスリット加工して,接合部・肋筋を配筋し,段差部
のみコンクリートで一体にする方式である。この形式の試験体を作成し, 2体
は短期曲げ載荷実験と 1体は長期載荷たわみ計測を実施し,当方式が十分な
実用性能を有していることを確認している。
 このような新しい合成床はこれからの時代のニーズに見合った実用性を兼ね
そえている技術であり,今後の技術の発展に寄与するものと判断される。以上
のことから,本論文を PC技術協会賞論文部門に選定した。


 U 作品部門 
 作品部門作品部門は, PC技術の進歩と発展に大きく寄与するとともに,
美観・景観,構造・材料・施工,社会への貢献,環境への配慮などの諸観点
より選定した。

  ・ 東猿田川橋・巴川橋
中日本高速道路梶@東京支社 殿
 猿田川橋・巴川橋は,新東名高速道路に建設された PC複合トラス構造の橋梁
である。複合トラス橋としては世界最大スパンであるとともに,世界で初めてラー
メン構造を採用している。先行して施工した下り線工事では,格点構造の開発を
はじめ,種々の解析や実験により,構造の妥当性および安全性を検証している。
後発の上り線工事では,先行工事で得られた知見を活かし,主構数の減少など
更なる合理化を実施している。
 このような世界最大スパンのPC複合トラス橋であるこの橋梁は PC技術の発展
に寄与しているとともに,今後の PC技術の発展に寄与していることから PC技術
協会賞作品部門に選定した。

  ・ カルソニックカンセイ研究開発センター
本社カルソニックカンセイ梶@殿
 本建物の本館は,地上 7階建てで約 110 m × 60 mの整形な形状の建物
である。一般のロングスパンを含む事務所建築では S造が採用されるが,本
建物では PC構造を含むさまざまな構法を適材適所で採用した RC系の複合
構造形式とすることで,高性能・高品質で施工性・経済性の高い事務所建築を
実現している。加えて,大きな吹抜け空間や長スパンという空間の豊かさを確
保しつつ,梁貫通孔といった設備的な要件も満たした事務所建築を実現してい
る。
 このように本建物は PC技術をうまく利用して,時代のニーズに見合った空間
を作り出し,これからの発展に寄与するところ大である。よって,本構造物をPC
技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 九州新幹線 大野川橋りょう 
鉄道・運輸機構 九州新幹線建設局 殿
 九州新幹線の全線開業により博多・鹿児島中央間は約 1時間 20分で結ば
れ,九州圏の経済的発展が大いに促進されることが期待されている。本橋りょう
は,熊本県宇城市を流れる二級河川大野川上に交差角 30°で架設する橋りょ
うであり,河川協議との関係から 4径間連続エクストラドーズド PC橋( L= 286
m)を採用し,九州新幹線のシンボル的な橋りょうとなっている。
 このように本橋梁は美観ならびに実用面からもPC技術の素晴しさを具現した
ものであり, PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ パームジュメイラ・モノレール高架橋
ドバイ・ナキール社 殿
 パームジュメイラ・モノレール高架橋は,アラブ首長国連邦ドバイ首長国の
高級人工リゾート島「パームジュメイラ」に建設された全長 5.4 kmのモノレール
高架橋である。スパン長 29 m橋長 149 mの 5径間連続 PC橋を標準タイプと
し,それらを連続配置させることにより,島内のシンボル的構造物として,リゾー
ト空間との調和を図っている。また,本モノレールシステムは,中東諸国初の
鉄道交通施設として,関連各所より大きな注目を浴びている。
 このようにアラブ首長国連邦のシンボル的な役割をも果たしている本高架橋
は, PC技術の素晴しさを世界に発信しており,今後の技術の進歩に対して大
きく貢献していると認められた。よって,本高架橋を PC技術協会賞作品部門に
選定した。

  ・ 茄子作地区高架橋
国土交通省 近畿地方整備局 殿
 茄子作地区高架橋は今年の 3月に全面開通した第二京阪道路の大阪府枚方
市に位置し,平均スパン長 39.5 m,全幅員約 30 mの PC 20径間連続箱桁橋で
ある。現地で最大 240トンの U断面プレキャスト桁を製作・場内運搬し,一括吊り
上げ架設する新工法のU桁リフティング架設工法を採用することで,同種工事で
の世界最速レベルの施工速度と大幅なコスト削減,ならびに環境負荷の低減と
品質向上を同時に実現している。
 このように,本高架橋は PC技術の発展に寄与しているばかりでなく,その経済
性,環境負荷の低減など,今後の技術の進歩に対して大きく貢献していると認め
られた。よって,本高架橋を PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 羽田空港 D滑走路埋立/桟橋接続部 鋼管矢板井筒護岸プレキャスト
    PC柱及びプレキャスト PC桁を用いた消波護岸
国土交通省 関東地方整備局 殿
 この構造物は埋立と桟橋の組合せ工法で建設された羽田空港 D滑走路の埋
立/桟橋接続部に建設された消波護岸で,波の反射を低減するためにプレキャ
スト化した円形スリット柱 229本を用いている。円形スリット柱には遠心成形で製
造したφ 1200のプレキャスト PC部材を,また背面壁にはコンクリート充填鋼管
壁,上床版にはプレキャスト PC桁を用いており,「海上パルテノン神殿」との異名
をもつ構造物である。
 このように,本構造物は PC技術の発展に寄与しているばかりでなく,その構造
ならびに美観は,今後の技術の進歩に対して大きく貢献していると認められた。
よって,本構造物を PC技術協会賞作品部門に選定した。

  ・ 鷺舞橋
神奈川県 藤沢土木事務所 殿
 鷺舞橋は神奈川県立境川遊水地公園の歩道橋であり,橋長 129.0 m,幅員
5.45 m,最大平面曲線半径 80 mの曲線桁を有する PC 2径間連続吊橋である。
本橋は,日本国内では初となる片面吊構造を採用した PC吊橋であり,曲線桁の
内側地覆を吊り上げ位置として,橋桁を斜め上方向に吊り上げる構造となってい
る。ケーブルと橋桁の曲線を活かしたデザインは繊細かつ流麗な印象を与えてお
り,モニュメントとしても高い価値が認められる。よって,本橋梁を PC技術協会賞作品部門に選定した。


 V 技術開発部門    
  ・ 首都圏中央連絡自動車道 中新田高架橋
中日本高速道路鞄結梹x社 殿
潟sーエス三菱・清水建設葛、同企業体 殿
 中新田高架橋は,省力化および工期短縮を目的として,プレテPC技術規準シリ
ーズンションウェブ部材を積極的かつ大規模に採用した橋梁である。使用したプレ
テンションウェブ部材は約 4 000枚であり,工場でロングライン方式により製作を
実施し,また,固定支保工での施工では国内初である。このように,本橋梁はプ
レテンションウェブ部材を積極的かつ大規模に採用した橋梁であり,製作・建設面
においても新たな技術開発を行っており, PC技術の発展に寄与していると認め
られた。よって,本高架橋を PC技術協会賞技術開発部門に選定した。


 W 施工技術部門   
  ・ 九州新幹線 第 2地下道架道橋外鉄道
運輸機構九州新幹線建設局 殿
兜x士ピー・エス,鞄本ピーエス,日本高圧コンクリート鞄チ定建設工事共同企業体 殿
 九州新幹線 第 2地下道架道橋外工事は,九州新幹線博多・新八代間のうち
福岡県筑紫郡那珂川町の東部に位置する全長 1 080 m(31径間)の高架橋工
事である。起点側は, JR西日本博多総合車両所の営業線(新幹線)近接工事
で,また市街地でもあることから,周辺環境に配慮した慎重な施工が求められて
いた。これらのことを考慮し,現場条件,工程等を考慮し,移動式支保工,固定式
支保工,ガーダー架設,クレーン架設等多彩な工法を採用している。このように,
本構造物は新しい施工技術を駆使し,要求された諸条件を満足する施工を実施
して建設されたものであり, PC技術の発展に大きく寄与していると認められた。
よって,本構造物を PC技術協会賞施工技術部門に選定した。

  ・ 長良川橋(一般国道 475号 東海環状自動車道)
国土交通省中部地方整備局岐阜国道事務所 殿
ピーエス三菱・大林組異工種建設工事共同企業体 殿
 長良川橋は,一般国道 475号東海環状自動車道の美濃関 JCTと関広見 ICの
間を流れる長良川を東西に跨ぐ橋長 343 mの橋梁である。長良川は,鵜飼いで
の知名度や,日本名水にもあげられる清流であるということで,工事は工期短縮と河川への影響を最小限にすることが重要な課題であった。この課題を高度な施
工技術により克服し,無事完成させたことは, PC技術の向上に大きく寄与したと
認められた。
 よって,本橋梁を PC技術協会賞施工技術部門に選定した。